日常会話での「善意」や「悪意」と民法上では「善意」や「悪意」の意味は少し違います。
民法の中では善意は特定の事実を知っていないことで、悪意とは特定の事実を知っていることを意味します。
民法上での「善意」「悪意」の意味
善意・・・特定の事実を知らないことあるいは信じていたこと
悪意・・・特定の事実を知っていないことあるいは信じていないこと
「善意」がでてくる民法の条文
すべてではありません。
民法の中で善意が登場してくる条文をまとめました。
条文をみながら意味合いを考えると「善意」の民法上の意味が分かってくるのではないかと思います。
民法第32条 (失踪の宣告の取消し)
民法の第32条は、失踪者が生存しているか、または死亡したことが証明された場合、家庭裁判所が失踪の宣告を取り消すことを規定しています。
失踪の宣告の取消しが行われる前に「善意でした行為」の効力に影響を及ぼさない。とは、失踪していないと知っていて、あるいは信じていた場合に起こったことや契約等に関しては問題なく効力を持つことを意味します。
第三十二条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第93条 (心裡留保)
第93条は心裡留保に関して書かれいます。
心裡留保であると知っていた場合にその契約等の効力は無効になりますが、それを知らない(善意の)第三者が絡んだ場合には無効にはならないという風に定めています。
![](https://faw-nlily.com/wp-content/uploads/2023/11/DALL·E-2023-11-25-20.37.20-A-scene-depicting-two-characters-signing-a-contract.-One-character-an-Asian-male-is-smiling-and-signing-the-contract-in-a-straightforward-manner.-Th-300x300.png)
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第94条 (虚偽表示)
民法第94条は、「虚偽表示」に関する法的規定です。
虚偽の意思表示の無効性と、善意の第三者への影響を定めています。
(虚偽表示)
第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第95条 (錯誤)
民法第95条は、錯誤とそれに基づく意思表示の取消しに関する規定です。この条文は、意思表示が重要な錯誤に基づく場合に取り消すことができると定めています。
この場合は当該事象をしらない善意の第三者には対抗できないことを示しています。
(錯誤)
第九十五条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第96条 (詐欺または脅迫)
民法第96条は、詐欺や強迫による意思表示の取り消しに関する規定です。
詐欺または強迫によってなされた意思表示は、その被害者によって取り消すことができます。
詐欺による意思表示の取消しも、善意でかつ過失がない第三者には対抗できません。
これは、詐欺や強迫による取引の被害から無関係な第三者を保護するための措置です。
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第162条(所有権の取得時効)
民法第162条は、所有権の取得時効に関する規定です。
この条文によれば、所有の意思を持ち、平穏かつ公然と他人の物を占有した者は、一定の期間後にその所有権を取得できるとされています。
具体的には、二十年間そのような占有を続けた場合、所有権を取得できます。
さらに、占有の開始時に善意(つまり、その物が他人のものであると知らず)であり、かつ過失がない場合には、十年間の占有で所有権を取得することが可能です。
(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第186条(所有権の取得時効)
日本の民法第186条は、占有に関する推定について定めています。
この条文によると、占有者は、所有の意思を持ち、善意で、平穏に、かつ公然と占有していると推定されます。
これは、法的には、ある人が物を占有している場合、その人がその物を所有する意志を持ち、他人の権利を侵害する意図がなく、平和的かつ公開的に占有していると見なされる、という意味です。
さらに、この条文の第2項では、ある時点と別の時点で占有していることが証明されると、その間の期間も継続して占有していたと推定されます。
この規定は、所有権や占有権の争いにおいて、占有の事実関係を明確化するためのものです。
(占有の態様等に関する推定)
第百八十六条 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第189条 (善意の占有者による果実の取得等)
この条文では、善意の占有者(つまり、その物が他人のものであることを知らずに占有している人)が占有物から生じる果実(たとえば、土地からの収穫物)を取得する権利を有することを明記しています。
さらに、善意の占有者が所有権に関する訴訟で敗訴した場合、訴えの提起時から悪意の占有者とみなされます。
第百八十九条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
「悪意」がでてくる民法の条文
すべてではありません。
民法の中で「悪意」が登場してくる条文をまとめました。
条文をみながら意味合いを考えると「悪意」の民法上の意味が分かってくるのではないかと思います。
民法第189条 (善意の占有者による果実の取得等)
この条文では、善意の占有者(つまり、その物が他人のものであることを知らずに占有している人)が占有物から生じる果実(たとえば、土地からの収穫物)を取得する権利を有することを明記しています。
さらに、善意の占有者が所有権に関する訴訟で敗訴した場合、訴えの提起時から悪意の占
第百八十九条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第190条(悪意の占有者による果実の返還等)
民法第190条は、「悪意の占有者による果実の返還等」に関する規定です。
悪意の占有者(つまり、自分が占有している物が他人のものであることを知りながら占有している人)は、その占有物から得た果実(例えば、土地からの収穫物)を返還する義務を負います。
また既に消費したり、過失によって損傷させたり、収取を怠った果実の代価も償還する必要があります。
これは、不正に利益を得た占有者が、その利益を正当な所有者に返還することを義務付けるための規定です。
第百九十条 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第196条 (占有者による費用の償還請求)
民法第196条は、「占有者による費用の償還請求」に関して定めています。
占有者が占有物を返還する際、その物の保存のために支出した必要費用(例えば、修理や保守に関する費用)を物の回復者(正当な所有者)から償還させることができます。
ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
(占有者による費用の償還請求)
第百九十六条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
民法第509条は、特定の債務における相殺の制限について定めています。
この条文では、債務者が特定の種類の債務に関して債権者に対して相殺を行うことはできないとしています。
相殺とは、相互に存在する債権と債務を相互に打ち消し合うことです。
具体的には、以下の二つの種類の債務が相殺できないとされています
悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務:故意による不法行為によって発生した損害賠償債務は、相殺の対象外とされています。
人の生命または身体の侵害による損害賠償の債務:人の生命や身体を侵害する行為によって生じた損害賠償債務も、相殺できません(ただし、これは悪意による不法行為を除きます)。
(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百九条 次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
民法第525条 (指図証券の善意取得)
指図証券の占有を何らかの事由により失った者がいる場合に、新たな所持人がその権利を証明できれば、その証券を返還する義務がないことを定めています。ただし、その所持人が悪意または重大な過失により証券を取得した場合は、この規定は適用されません。
(指図証券の善意取得)
第五百二十条の五 何らかの事由により指図証券の占有を失った者がある場合において、その所持人が前条の規定によりその権利を証明するときは、その所持人は、その証券を返還する義務を負わない。ただし、その所持人が悪意又は重大な過失によりその証券を取得したときは、この限りでない。
民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089