労働基準法における解雇に関する規定は、労働者の安定した雇用環境を保護するために重要です。
第19条と第20条は、解雇の条件と手続きについて具体的なガイドラインを提供しており、これらを適切に理解し適用することは、社会保険労務士としての基本的なスキルとなります。
解雇制限の基本(労働基準法第19条)
労働基準法第19条は、業務上の負傷や疾病による休業期間及びその後30日間、また産前産後の女性が休業する期間及びその後30日間において、労働者を解雇することを禁止しています。ただし、打切補償の支払いや天災事変などやむを得ない事由により事業の継続が不可能な場合はこの限りではありません。この条文は、労働者が不安定な状況におかれることなく、安心して休業や療養に専念できるよう保護しています。
図表: 第19条に基づく解雇制限の概要図
![](https://faw-nlily.com/wp-content/uploads/2023/11/労働者の契約期間-1-1024x576.jpg)
解雇の予告と例外(労働基準法第20条)
労働基準法第20条は、労働者を解雇する場合、少なくとも30日前の予告が必要であると規定しています。予告なしで解雇する場合は、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。しかし、天災事変など特別な事情がある場合は、この予告義務から除外されます。この条文は、労働者が急な解雇による経済的影響を受けないようにするためのものです。
図表: 第20条に基づく解雇予告の概要図
![](https://faw-nlily.com/wp-content/uploads/2023/11/労働者の契約期間-2-1024x576.jpg)
また、解雇予告手当と解雇予告を併用することもでき、その場合は合計で30日相当になれば問題なく解雇することができます。
例えば、20日以上の平均賃金手当に加えて10日前の解雇予告であれば、合計で30日分の解雇予告手当と解雇予告になるため解雇予告として成立します。
そのため、解雇の予告においては解雇する日時を明記、明言する必要があります。
解雇予告は取り消せる?
- 解雇予告は取り消せますか?
-
一般的に取り消すことはできません。
ただし、労働者が自由な判断のもとに合意する場合には使用者は解雇予告を取り消すことができます。
- 労働者が解雇予告の取り消しに同意しなかったら?
-
そのまま解雇が成立します。
自己退職の扱いになることはありません。
特定の労働者への解雇規定の適用除外(労働基準法第21条)
第21条は、日雇い労働者、一定期間を定めて雇用される労働者、季節的業務に従事する労働者、試用期間中の労働者など、特定のカテゴリーの労働者に対して解雇予告の規定を適用しないとしています。ただし、これらの労働者が一定の期間を超えて引き続き雇用される場合は、この限りではありません。この条文は、特定の雇用形態に応じた柔軟な対応を可能にしています。
第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
一 日日雇い入れられる者
二 二箇月以内の期間を定めて使用される者
三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者
四 試の使用期間中の者
労働基準法 e-Gov法令検索
まとめ
労働基準法における解雇規定は、労働者の保護と事業者の運営の両方の視点から考慮されています。これらの規定を正しく理解し適用することは、労働環境の安定と公正な労働慣行の維持において極めて重要です。
おまけ:確認クイズ(社労士試験対策)
確認クイズ: 労働基準法における解雇規定に関する知識を確認しましょう。
- 労働基準法第19条によれば、どのような場合に解雇が制限されますか?
A) 労働者が業務上負傷した場合のみ
B) 労働者が疾病で休業する期間及びその後30日間
C) 労働者が自己都合で休業する場合 - 労働者を解雇する場合、解雇予告手当を支払わない場合、労働基準法第20条により最低どの程度前に予告する必要がありますか?
A) 15日前
B) 30日前
C) 60日前 - 第21条によると、どのタイプの労働者が解雇の予告規定から除外されますか?
A) 日雇い労働者や一定期間の雇用労働者
B) 常時雇用される労働者
C) 管理職の労働者
解答:
- B) 労働者が疾病で休業する期間及びその後30日間
- B) 30日前
- A) 日雇い労働者や一定期間の雇用労働者