中間搾取の排除とはなにか?

社労士の資格の勉強をしているときに、「中間搾取の排除」という言葉がでてきてどういう意味なんだろうと思ったことがあります。

おそらく同じ疑問を持つ方も多くいらっしゃると思うので「中間搾取の排除」について詳しくわかりやすく説明していきたいと思います。

目次

中間搾取の排除とは?

労働基準法6条に決められている中間搾取を禁止するための規定です。

中間搾取とはいわゆる「ピンハネ」のことです。

第六条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。


労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)e-Gov法令検索

業として利益を得る・・・1.営利を目的とし、かつ2.継続して行うことをいう。
1回だけだとしても、今後も続ける意思がある場合には継続に当てはまることに注意です。

違反した場合は?

この第6条の規定に違反した場合は、労働基準法第118条第1項によって1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となることが定められています。

労働者の生活を脅かしている割には罪が軽い気がしますね。

そのためか中間搾取の話やニュースをよく耳にします。もう少し厳しく取り締まってほしいものです。

労働基準法第118条第1項

労働基準法では、第百十七条以降に罰則が書かれています。
中間搾取の排除に違反した場合はこの罰則に従って刑が決められます。

第百十八条 第六条、第五十六条、第六十三条又は第六十四条の二の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) e-gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

労働者派遣と中間搾取の関係

派遣は中間搾取にはならない?

1986年に「労働者派遣法」ができこの法律に基づいて労働者を派遣する分には中間搾取には当てはまらず、労働基準法第6条は適用されません。

法律に基いて許される場合のほかという部分に労働者派遣法が当てはまるのですね。

この労働者派遣では、派遣元と労働者には雇用関係がありますが、派遣元と派遣先の間にも派遣契約があり、派遣先の企業と労働者の間には指揮命令関係があります。

この三つ巴の関係があり、三者が一体となって成立しているため中間搾取とはみなされないという理屈になります。

少しこじつけのような気もしますが、現在では一般的にみられる形態です。

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/houdou/2008/20080604-souken.html

ただし、この関係が崩れる場合があります。それが偽装請負や二重派遣と呼ばれるものです。

正確には二重派遣それ自体では労働基準法第6条に該当するわけではなく、二重派遣しているときにその間となるか会社が最終的な派遣先の会社からお金を受け取ったときに中間搾取という風にみなされます。

では、お金を受け取らなければいいかというとそうではなくその場合には職業安定法に違反することになり、やはり罰則が生じます。

(労働者供給事業の禁止)

第四十四条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

(労働者供給事業の許可)

第四十五条 労働組合等が、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、無料の労働者供給事業を行うことができる。

職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)e-Gov法令検索

中間搾取が生じる場合(二重派遣)


https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/houdou/2008/20080604-souken.html

上記のように指揮命令権も雇用関係もない第三者である派遣先が存在すると、労働者に入るはずだった一部のお金が不当の搾取されている形になります。これが中間搾取の排除が労働基準法で定められている理由です。

実際の事例

最近のニュースであった中間搾取のニュースでは以下のようなものがありました。

・ベトナム人大量あっ旋 2100万円を中間搾取――小諸労基署

長野・小諸労働基準監督署(徳永和成署長)は、自らあっ旋した外国人労働者延べ230人の賃金から中間搾取していたとして、清掃業務請負業のホアンアン合同会社(大阪府大阪市)と同社代表社員および2人の業務執行社員の計1社3人を、労働基準法第6条(中間搾取の排除)違反の疑いで長野地検上田支部に書類送検した。

ベトナム人大量あっ旋 2100万円を中間搾取――小諸労基署 
2020/12/07 【労働新聞 ニュース】
https://www.rodo.co.jp/news/98261/

・実習生から中間搾取 工事部長と建設業者送検 川崎南労基署

神奈川・川崎南労働基準監督署(松本進吾署長)は、賃金の一部を搾取していたとして、建設業の㈱松岡工業(同県川崎市)と同社工事部長を労働基準法第6条(中間搾取の排除)違反の疑いで横浜地検川崎支部へ書類送検した。

実習生から中間搾取 工事部長と建設業者送検 川崎南労基署
2023.02.28 【労働新聞 ニュース】
https://www.rodo.co.jp/news/145617/

・賃金総額の3%中間搾取 紹介業者役員を送検 佐世保労基署

長崎・佐世保労働基準監督署(熊崎啓代署長)は、求職者の得た賃金総額から毎月3%を中間搾取していたとして、有料職業紹介業の㈲トップマネキン紹介所(長崎県佐世保市)の取締役を労働基準法第6条(中間搾取の排除)違反の疑いで長崎地検佐世保支部に書類送検した。

賃金総額の3%中間搾取 紹介業者役員を送検 佐世保労基署
2021.03.25 【労働新聞 ニュース】
https://www.rodo.co.jp/news/103618/

このように、中間搾取をして労働基準法第6条に違反して書類送検されているケースは多いですね。

繰り返しにはなりますが、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という風に罪が軽いため、なかなかなくならないのも事実です。

人を雇用する者はこのような中間搾取を絶対しないこと。また労働者も正しい知識を持って自分の置かれている環境に疑問を持てるようになるといいですね。

まとめ

いかがだったでしょうか?中間搾取の排除について詳しく解説しました。

社労士の資格を勉強している人にとってはよく見かける内容かもしれません。

とても重要な内容なので覚えておきましょう。

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